「社内不正を暴くためのログ調査・端末解析・ネットワーク監視の実際」

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社内不正の典型的なパターン

社内不正は「偶発的な過失」ではなく、意図的に仕組まれるケースが多いため、ログや端末解析を通じて痕跡を見抜くことが重要です。ここでは、典型的なパターンを整理します。非技術部門向けの観点は「社員による横領・情報漏洩を疑ったときに取るべき調査手順」にまとめています。

横領・着服に関連するシステム利用

横領や着服は、経理システムや販売管理システムの不正利用によって行われるケースが多く見られます。

  • 架空の請求書を登録し、支払いを自分や関連口座へ誘導
  • 経費精算システムを利用して不正な立替請求
  • 在庫管理システムを改ざんして商品横流し

このようなケースでは、操作ログや認証履歴を追跡することで、通常では発生しない取引の痕跡を明らかにできます。

情報漏洩やデータ持ち出しの手口

内部不正の中でも深刻なのが、顧客リストや技術情報の持ち出しです。

  • USBメモリや外部HDDへの大量コピー
  • Dropbox, Google Drive などクラウドストレージへの転送
  • 個人アドレス宛に業務メールを転送

特にクラウドサービス経由の持ち出しは検知が難しく、DLP製品やEDRソリューションの導入が効果的です。
具体的な法人対応の解説は「情報漏洩が起こる社内の隙」でも紹介しています。

退職前後に発生しやすい内部不正

退職が決まった社員による「最後の持ち出し」は、内部不正で特に注意すべき場面です。

  • 顧客データを転職先へ持ち込む
  • 技術資料を独立後のビジネスに流用
  • 秘密保持契約に違反して成果物をコピー

このような行為は法的リスクが高く、証拠確保が必要です。
フォレンジック調査会社に依頼すれば、PC・クラウド・メールの痕跡を法的証拠として保全できます。
より総務部寄りの対応は「退職前後に起こりやすいリスク要因」を参照してください。

ログ調査による不正検知の方法

社内不正の多くは、システムや端末のログに痕跡を残すため、ログ解析は最も基本的で有効な調査手段です。ここでは、実務で用いられる代表的なログ調査手法を整理します。

Windowsイベントログ/Linux Syslog の解析

オペレーティングシステムは、標準で詳細なログを記録しています。

  • Windowsイベントログ:ログオン/ログオフ記録、不正な権限昇格、アプリケーションの異常動作
  • Linux Syslog:SSHログイン履歴、cronジョブ改ざん、権限変更記録

これらを確認することで、通常ではあり得ない操作の痕跡を発見できます。
法人向けの基礎整理は「社員不正が疑われるときの調査手順」を参考にできます。

認証失敗や異常ログインの追跡

横領や情報漏洩の前段階として多いのが、通常とは異なるログイン試行です。

  • 深夜・休日に発生した社内システムへのアクセス
  • 連続したログイン失敗と、その後の成功
  • 地理的に不自然な場所からのリモートアクセス

こうした痕跡は、不正アクセスのサインとして調査対象となります。
SIEM製品やEDRを導入すれば、アラートを自動生成でき、調査負担を軽減できます。

SIEMによる相関分析の活用

単独のログでは分からない不正も、複数のログを相関分析することで浮かび上がります。

  • ログイン履歴 × ファイルアクセス履歴の突合
  • USB利用履歴 × 大容量データ転送の突合
  • ネットワーク通信ログ × アカウント操作ログの照合

SIEM(Security Information and Event Management)ツールは、これらの相関分析を自動化できます。
商用SIEMソリューションを導入すれば、リアルタイム検知と法的に有効な監査ログ保全が可能です。

不正アクセス調査の公式サイト→

端末解析で明らかにできる証拠

不正を行った社員の端末には、操作履歴やデータ移動の痕跡が残されていることが多く、ログ調査と並んで重要な調査手法となります。ここでは端末解析で明らかにできる代表的な証拠を紹介します。

ファイル操作履歴とタイムスタンプ解析

端末内のファイルシステムには、ファイルの作成・変更・削除のタイムスタンプが記録されています。

  • 不自然な時刻にファイルが大量にコピー/削除されている
  • 業務に関係のないディレクトリへデータが移動されている
  • システムログと突き合わせると、行為者の特定が可能

フォレンジック調査会社は、これらの証拠を法的に有効な形で保全できます。

USB・クラウド利用の痕跡

情報持ち出しの多くは、USBメモリや外部クラウドサービスを経由します。

  • USBデバイスの接続履歴(デバイスIDを含む)
  • Dropbox, Google Drive, OneDrive などへのアップロード履歴
  • 大容量データの同期や転送ログ

DLP(Data Loss Prevention)製品を導入すれば、こうした不正な持ち出しをリアルタイムで検知可能です。
法人対応の基礎は「情報漏洩が起こる社内の隙」で整理されています。

メール送信・外部転送のチェック

メールもまた、機密情報を持ち出す典型的な経路です。

  • 個人メールアドレスへの業務データ転送
  • 外部ファイル共有リンクの送信
  • 添付ファイルの不審な送受信履歴

メールログの解析に加えて、商用のフォレンジックツールを利用することで、証拠性の高いレポートを生成できます。

ネットワーク監視の重要性

社内不正は端末操作だけでなく、ネットワーク通信を通じて外部に情報を流出させるケースも多く見られます。そのため、ネットワーク監視は不正検知に欠かせない調査手段です。

パケットキャプチャによる外部通信追跡

Wireshark や Zeek といったツールを使えば、不審な通信の内容や宛先を詳細に解析できます。

  • 不自然な時間帯の大容量転送
  • 不審なIPアドレスや未承認サーバーへの接続
  • 暗号化されていない機密データの送信

これにより、内部不正によるデータ流出を通信レベルで裏付ける証拠が得られます。

C2サーバーや不審IPとの接続検出

マルウェア感染を経由した内部不正では、外部C2サーバー(Command & Control)との通信が行われることがあります。

  • 定期的なビーコン通信の検出
  • 地理的に不自然な海外IPへのアクセス
  • 社内ポリシー外のポートを利用した通信

EDRやSIEMソリューションを導入することで、これらの異常をリアルタイムで検知できます。

DLP(Data Loss Prevention)製品の活用

機密情報の持ち出しを未然に防ぐ仕組みとして有効なのが、DLP製品です。

  • ファイル転送やメール添付の内容を監視・制御
  • USBやクラウドストレージへのコピー制御
  • 社内規程違反の行為をアラートで検知

DLPを導入することで、「持ち出される前にブロック」する一次防御が可能になります。
クラウド対応型DLPソリューションを選べば、テレワーク環境でも有効に機能します。

フォレンジック調査と自動化ツールの導入

内部不正の証拠を確保するには、フォレンジック調査による専門的な解析と、日常的に利用できる自動化ツールの導入が効果的です。ここではその代表例を紹介します。

エンドポイント検知と対応(EDR)

EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末の挙動を常時監視し、不審な動きを即座に検知・対応できる仕組みです。

  • 不審なプロセス起動や権限昇格を検出
  • データ持ち出しの兆候をリアルタイムでアラート
  • ログや証拠を自動的に保全

EDR製品を導入すれば、初動対応のスピードを飛躍的に高められます

ネットワークフォレンジックツール

ネットワークフォレンジックは、通信ログやパケットデータを長期間保存・解析し、不正通信の全体像を明らかにする技術です。

  • 過去のデータ流出経路を再現
  • 不審な通信セッションの追跡
  • C2通信の特定とブロック

OSSの Zeek から、商用の NetWitness や Fidelis まで幅広い選択肢があります。
組織規模や予算に応じたツール選定が重要です。

商用調査ソフトと外部専門機関

本格的な社内不正調査では、商用のフォレンジック調査ソフト外部専門機関の協力が不可欠です。

まとめ:技術と体制の両輪で内部不正を防ぐ

社内不正は、外部からのサイバー攻撃以上に企業の信頼を揺るがす深刻なリスクです。
発覚後に対処するだけでは不十分で、技術と組織体制の両輪で防止策を講じることが求められます。

本記事で整理したポイントを振り返ると以下の通りです。

  • 典型的な不正は 横領/情報漏洩/退職者による持ち出し という3つのパターン
  • 検知には OSログ解析/異常ログインの追跡/SIEMの相関分析 が有効
  • 端末調査で ファイル操作・USBやクラウド利用・メール転送 の痕跡を確認可能
  • ネットワーク監視により 不審な通信・C2接続・DLPによる持ち出し防止 を実現
  • 強力な証拠保全には EDR・フォレンジックツール・外部専門機関 の導入が不可欠

一方、非技術部門が理解しておくべき視点は「社員による不正が起きたときの初動対応」で補足できます。

結論:内部不正への備えは「技術による検知・防御」と「組織的な体制・教育」の両立が鍵です。
企業は、日常的な監視とインシデント対応計画を整備し、外部専門家との連携も含めた包括的な対策を進める必要があります。

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